Node.js Worker API と Web Worker API は、どちらもマルチスレッドプログラミングを実現するための仕組みですが、実行環境と目的が異なります。以下に、両者の関係と違いを詳しく説明します。

Web Worker API

• 実行環境: ブラウザ上で動作します。
• 目的: ブラウザのメインスレッド（UIスレッド）の負荷を軽減し、重い処理をバックグラウンドで実行するために設計されています。
• 特徴:
  • DOMにアクセスできません。
  • windowオブジェクトやdocumentオブジェクトは利用できません。
  • postMessageとonmessageを使用してメインスレッドと通信します。
  • 種類: Dedicated Workers、Shared Workers、Service Workersがあります。

例

// メインスレッド
const worker = new Worker('worker.js');
worker.postMessage('Hello Worker!');
worker.onmessage = (event) => {
    console.log('Message from Worker:', event.data);
};

// Workerスクリプト (worker.js)
self.onmessage = (event) => {
    console.log('Message from Main:', event.data);
    self.postMessage('Hello Main!');
};

Node.js Worker API

• 実行環境: Node.jsランタイム上で動作します。
• 目的: CPU集約的なタスクを並列処理し、Node.jsアプリケーションのパフォーマンスを向上させるために設計されています。
• 特徴:
  • Node.jsの組み込みモジュール（例: fs, http）を利用できます。
  • worker_threadsモジュールを使用します。
  • postMessageとon('message')を使用してメインスレッドと通信します。
  • SharedArrayBufferを使用して、Worker間でメモリを共有できます。

例

// メインスレッド
const { Worker } = require('worker_threads');
const worker = new Worker('./worker.js', {
    workerData: 'Hello Worker!'
});
worker.on('message', (message) => {
    console.log('Message from Worker:', message);
});
worker.postMessage('Hello from Main!');

// Workerスクリプト (worker.js)
const { parentPort, workerData } = require('worker_threads');
console.log('Worker Data:', workerData);
parentPort.on('message', (message) => {
    console.log('Message from Main:', message);
    parentPort.postMessage('Hello from Worker!');
});

両者の関係

共通点

• どちらもメインスレッドとは別のスレッドでスクリプトを実行します。
• postMessageとメッセージイベントを使用して、メインスレッドとWorker間で通信します。
• シングルスレッドの制約を克服し、並列処理を実現します。

違い

使い分けのポイント

• Web Worker API:
  • ブラウザ上で動作するウェブアプリケーションで、UIの応答性を保ちつつ重い処理を実行したい場合。
  • 例: 画像処理、データの並列計算、バックグラウンドでのデータ同期。
• Node.js Worker API:
  • Node.jsアプリケーションで、CPU集約的なタスクを並列処理したい場合。
  • 例: 大量のデータ処理、複雑な計算、バックエンドでの並列タスク実行。

補足: 類似の概念

• Service Workers:

  Web Workersの一種で、オフライン機能やプッシュ通知を実現するために使用されます。Node.jsには直接対応する機能はありませんが、バックエンドでの類似機能は別の方法で実現できます。

• Clusterモジュール:

  Node.jsには、マルチコアCPUを活用するためのclusterモジュールもあります。これはプロセスベースの並列処理を提供し、worker_threadsとは異なるアプローチです。

まとめ

• Web Worker API: ブラウザ向けのマルチスレッド機能。
• Node.js Worker API: Node.js向けのマルチスレッド機能。

両者は異なる環境で使用されますが、どちらも並列処理とパフォーマンス向上を目的としています。開発者は、アプリケーションの実行環境に応じて適切なAPIを選択できます。