JavaScript/!=
!=
(Inequality operator) は、ECMAScript における不等価演算子です。この演算子は、2つのオペランドを比較し、それらが等しくないかどうかを判断します。不等価演算子は等価演算子(==
)と同様に型変換(型強制)を行い、異なる型の値を比較する際に特定のルールに従います[1]。
構文
EqualityExpression[?In, ?Yield, ?Await] != RelationalExpression[?In, ?Yield, ?Await]
EqualityExpression[?In, ?Yield, ?Await]
: 比較される左側のオペランドRelationalExpression[?In, ?Yield, ?Await]
: 比較される右側のオペランド
この演算子は、以下のように使用されます:
let x = 5; let y = "6"; console.log(x != y); // true(型変換が行われた後、値が異なる)
動作
不等価演算子(!=
)は、以下の順序で動作します:
- 等価比較を実行: 内部的に等価演算子(
==
)と同じ比較ロジックを使用 - 結果を否定: 等価比較の結果の論理否定(NOT)を返す
つまり、a != b
は !(a == b)
と等価です。
例
基本的な使用法
以下のプログラムは、不等価演算子の基本的な使用法を示しています。
// 基本的な使用法 let x = 5; let y = 10; console.log(x != y); // true(値が異なる) let a = 5; let b = 5; console.log(a != b); // false(値が同じ)
このプログラムでは、同じ型(数値)の値を比較しています。
型変換の例
以下のプログラムは、不等価演算子による型変換の例を示しています。
// 数値と文字列 console.log(5 != "5"); // false(文字列 "5" が数値 5 に変換され、等しいと判断される) console.log(5 != "6"); // true(文字列 "6" が数値 6 に変換され、5 と異なると判断される) // ブーリアンと数値 console.log(true != 1); // false(true が 1 に変換され、等しいと判断される) console.log(false != 1); // true(false が 0 に変換され、1 と異なると判断される) // null と undefined console.log(null != undefined); // false(特別なケースとして等しいと判断される) console.log(null != 0); // true(null は 0 と等しくないと判断される) // オブジェクトと基本型 console.log([1] != 1); // false([1] は "1" に変換され、さらに 1 に変換され、等しいと判断される) console.log([2] != 1); // true([2] は "2" に変換され、さらに 2 に変換され、1 と異なると判断される)
このプログラムでは、異なる型の値を比較した場合の型変換の仕組みを示しています。
条件文での使用
以下のプログラムは、条件文内での不等価演算子の使用例を示しています。
// 条件文での使用 let value = "5"; if (value != 6) { console.log("値は 6 ではない"); // 出力される } let emptyArray = []; if (emptyArray != true) { console.log("空の配列は true ではない"); // 出力される }
このプログラムでは、条件文の中で不等価演算子を使用して、型変換が発生する例を示しています。
注意点
- 予期しない結果: 等価演算子と同様に、型変換のルールにより直感に反する結果が生じることがあります。
- NaN:
NaN
は他のどの値とも等しくないため、NaN != x
は常にtrue
を返します(NaN
自身との比較を含む)。
// 予期しない結果の例 console.log([] != ""); // false([] は "" と等しいと判断される) console.log([] != 0); // false([] は 0 と等しいと判断される) console.log("" != 0); // false("" は 0 と等しいと判断される) // NaN の例 console.log(NaN != NaN); // true(NaN は自分自身を含む他のどの値とも等しくない) console.log(NaN != 5); // true
厳密不等価演算子との違い
不等価演算子(!=
)と厳密不等価演算子(!==
)の主な違いは、以下の通りです:
- 不等価演算子(!=): 型変換を行ってから比較し、結果を否定する
- 厳密不等価演算子(!==): 値または型のいずれかが異なる場合に
true
を返す
例:
let x = 5; let y = "5"; console.log(x != y); // false(型変換が行われ、等しいと判断される) console.log(x !== y); // true(型が異なるため) console.log(null != undefined); // false(型変換により等しいと判断される) console.log(null !== undefined); // true(型が異なるため)
ベストプラクティス
- 予期しない型変換を避けるため、多くの場合は厳密不等価演算子(
!==
)の使用が推奨されます。 - コードの意図を明確にするために、型変換が必要な場合は明示的に行うことが良い習慣です。
// 推奨される方法 let x = 5; let y = "5"; // 暗黙的な型変換に依存する(理解しにくい) if (x != y) { // 実行されない } // 明示的な型変換を行う(理解しやすい) if (x !== Number(y)) { // 実行されない } // または厳密不等価演算子を使用する if (x !== y) { // 実行される }
実装上の詳細
不等価演算子(!=
)の内部的な実装は、以下のようになっています:
- 左オペランドを評価する
- 右オペランドを評価する
- Abstract Equality Comparison アルゴリズムを使用して比較を行う
- 比較結果の論理否定を返す
Abstract Equality Comparison アルゴリズムは等価演算子(==
)と共有されており、型変換のルールも同じです。